訪問看護におけるQOLの向上を考える~その人らしくいるために~

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 訪問看護というと、多くは利用者様の自宅で医療的なケアをおこなっているだけなのでは?というイメージを持っている方が、多いのではないかと思います。しかし、実は利用者様の生活の質にも大きく影響しているんです。今日はそのことについて、少し書いていこうと思います。

訪問看護とQOLの関連性は?

 訪問看護の目的は単なる医療行為だけでなく、利用者様が住み慣れた環境で安心して、その人らしい生活が送れるように支援していくことにあります。その方の考え方やご自宅の環境も含めて、ご自宅でどのように生活していきたいかを、一緒に考えながら支援していくことが大切になってきます。

そこで、QOLとは?

QOLとは(Quality Of  Ⅼife)の略で生活の質などと訳されており

身体的、精神的、社会的、そして生活環境のすべてが充実している状態をいいます。

 しかし、この生活の質とは主観的なものであり、満足度というのは個人差があり、利用者様の立場や考え方を考慮しながら柔軟に対応していく必要があります。訪問看護においては、いかにQOLの維持や向上ができるかを目標にケアを行っていくことが大切になります。

 訪問看護がほかの医療サービスと異なるのは、利用者様の自宅での生活の様子を見ながら、コミュニケーションもしっかり取ることができ、ケアをおこなえる点にあると思います。またご家族様がいる場合は、ご家族様とも相談しながらおこなえることも大きなメリットだと思います。

訪問看護がQOLを向上させる方法には?

 利用者様それぞれの、満足度や幸福度を考え、QOLの向上を目指すには、コミュニケーションはとても大切です。ただコミュニケーションと言っても、世間話などの会話だけでなく、人間関係や環境も含めてになってきます。                                   

①利用者様との会話の時間を大切にし、しっかりお話を聴くこと。

何気ない会話の中にも、日頃感じている不安や悩みが含まれていることもあります。どんな些細なことにも、耳を傾け受け入れていきましょう。またご家族様からもお話を聴くことで、その方の今までの人生観や社会的な背景であったり、大切にされている価値観を知る手がかりとなります。

②利用者様が自分でできることを見つけ、環境を整える。

利用者様にとって「自分で出来る」というのはQOLにとって重要なのではないかと思います。必ずしもAⅮⅬの向上がQOLの向上につながる訳ではないですが、少しでも自立した生活ができることは、利用者様の充実感や、達成感につながっていきます。何でもこちらがしてしまうのではなく、自分でやりたいこと、できることをおこなっていける環境を整えていくことが必要です。

③利用者様の価値観を知る。

 利用者様お一人、お一人、人生観や幸福感など違います。今まで、どのような生活をされてきたのか、物事の考え方など理解したうえで、どのような生活をしたいのか、満足感など知ることで、その人にあったケアを考えていくことができます。よかれと思っておこなったケアが、こちらの価値観の押し付けになっていることもあります。自宅で心地よく、安心して過ごしていただくため、相手の気持ちに寄り添い、価値観を理解する必要があります。

具体的な取り組みの事例

 少し、私の経験談を書きますね。その方は末期がん、余命宣告を受けて退院されました。少し動くと息苦しくなるため、在宅酸素も利用。痛みも強く、疼痛コントロールが必要な状態でした。

本人様は苦痛のためか、家族の方に強い口調で物を言う感じで、最初の頃は主治医や看護師にも「お前らに何ができるんや」という受け入れは良くありませんでした。しかし、訪問を何回かしているとケアの受け入れは良くなり、ケアもスムーズに受けていただけるように…。

本人の希望はできる限り自分でトイレに行きたい!オムツは絶対したくない!という事でした。その都度トイレの介助を行っていた家族の負担は多く、家族への精神的なケアも必要でした。

息苦しさや薬の副作用による傾眠傾向もあったため、尿器やポータブルトイレの使用など提案もしましたが拒否。「おむつの使用は死ぬとき」と繰り返し言われていました。自宅での転倒もあったため、心配でしたが本人の希望が叶えられるように…そして、できる限り車いすでトイレに行けるよう生活環境の整備もおこないました。その方の価値観を大切にし、本当に最期までおむつは使用せずに自宅で過ごすことができました。家族様も大変でしたが、「本人の意思をくんで、十分やりきりました。」とすっきりされた表情で言われていたのを、今でも思い出します。

このエピソードは本人様、家族様の達成感につながる事例でした。本人様と家族様の思いを傾聴し、お互いの妥協も必要になることもあると思いますが、寄り添った看護ができるようにしていくことが大切ですね。

おむつは絶対したくない!

まとめ

 本当に価値観は人それぞれです。よかれと思っておこなったケアが、価値観の押し付けになってしまうこともります。QOLを向上させるには、利用者様や家族様が何を求めているのかを、しっかり把握し、ケアをおこなうことが大切になります。

そのことで、利用者様の住み慣れた自宅だからこそ、QOLを重視した看護ケアをおこないやすいとも言えます。「お家で過ごしたい」と言われる利用者様は多いです。それを叶えるため、コミュニケーションを大切にし、利用者様の価値観を知ることで、個別的に本人様に寄り添った看護ケアをおこない、QOLを高めることができます。利用者様とのコミュニケーションの時間を大切にしていきましょう‼

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